我が家の庭にミルクティー色の猫が出入りするようになったのは確か・・2ヶ月ぐらい前だった
まだ元気ピンピンだったあきらのご飯をこっそり食べにきていた
キョロキョロ辺りを見渡し・・一直線にあきらのご飯のところまで駆け寄ると・・ものすごい勢いで口に入れ走って逃げて行った。
大きさからしてまだ4〜6ヶ月ぐらいだろうか・・・
また来るのかな・・そんなことを思っていると翌日もご飯をこっそり食べていた。
何日か日が空き・・あら、もう来ないのね・・
なぁんて思っているとまた来る
1週間ぐらい顔を見せなくなったなぁ・・っと思うと少し痩せてやって来る。
外の風がどんどん冷たくなって来た
毎年野良猫は見かけるけど・・暖かくなった春に同じ猫を見かけることはない
自然界のルールなのだろう
強いものだけが生き残る
氷点下になるこの辺で冬を越すのは・・きっと無理なんだ。
だからと言って無責任な餌付けは絶対にできない
かわいそうだけで手を差し伸べてはいけない
命と向き合う気がないなら放置するのが最大の優しさであり関わる人間としての責任の取り方
さて・・どうしたもんか・・
風が頬に突き刺さるような寒さの日、あきらの散歩をしながら
ふと昔を思い出した
・・あれは小学校低学年の頃だったか・・
姉が猫を拾ってきた。
それを飼おうと父が言って家族になった
それから数日した時、白くて可愛らしい子猫が近所をさまよっていた。
私は抱き上げうちに連れて帰ると、「このこ飼いたい」と父にお願いをした。
でも子猫を見た父がこう言った
「だめだ、元の場所に捨ててきなさい。うちにはもう猫がいるだろう」
父の言葉は絶対だった。
子猫を泣く泣く手放し・・家に戻った
それから数日後・・・
白い猫は冷たくなってコンクリートの片隅で丸まっていた。
どんなに寒い夜を過ごしたのだろう。こんな小さな体で・・
ごめんね、助けてあげられなくて・・
小学生の私はあまりにも無力だった。
姉が拾ってきた猫はその後20年以上生きた。
父は動物が大好きだった。
だからこそ徹底していた
〝自然界にむやみに手を出すな。出すなら責任を取れ〟
かわいそうだからとどんどん生き物が増えて行ったら管理ができない。
生き物が増えるというのは出費が増える。時間も手間もかかる。
かわいいだけで手にしてはいけない、かわいそうだけで餌付けしてはいけない。命と向き合うことの深さを教えてくれたのは父だった
白い子猫を迎え入れなかったのは父にとっても苦渋の決断だったんだろうなぁ・・
そんな思い出が頭をよぎりながら帰宅すると
またミルクティー色の猫が玄関にいた。こちらに気づくこともなく一心不乱にご飯を食べていた。
「おい、大丈夫かい?』
振り返ると同時にびっくりした猫はあきらの水をひっくり返して逃走した。
こんな寒い日に・・どこで過ごすんだろう。
我が家にはすでに3匹の先住猫と愛犬あきら。これ以上は増やせられないよな・・・
改めて自分の無力さを感じた。
エアコンの効いた部屋でぬくぬくと昼寝をしている猫たちを見ながら・・・
猫のご飯を玄関先へ置いた。
人は心が先に動く時がある、今がまさにそれだ。
私は無力だが助けてくれる人はいる
そっと置いたご飯にまたミルクティー色の猫がやってきて
ニャゴニャゴ言いながらそれはそれは美味しそうにご飯を食べて行った。
またおいで、なんとかしてあげるから。
空っぽになった器をみながら私は決断した。なんとか家族を見つけてあげよう。
そうして、動物病院の先生たちに協力してもらい・・
捕獲器を設置し・・出会ってから2ヶ月・・ようやくミルクティー色の猫は我が家のリビングで時を過ごすようになった
完全に警戒心丸出しだった日から・・今日で6日が過ぎた。
初めて手から食べた。
まだまだ警戒心はあるけど、体を触らせてくれるようになり、シャーシャーの数も減り始めてる
きっときみにぴったりの家族が見つかるよ。
だからそれまでのんびりしていたらいい。もう誰もきみを追い払ったりしないよ。
「動物と仲良くしたかったら相手が来るまで待つんだよ。辛抱!これが近道。」
父はどんな動物とも打ち解けれる魔法の持ち主だった。
私もそうなれるだろうか。
父の姿を見ることはもうないけれど、父の想いや言葉は私の中に残ってる、そしてそれは息子へきっと受け継がれる。
ミルクティー色の猫のおかげで父の想いを感じることができた。きっと我が家に現れ出たのにも意味があるんだなぁ・・なんて思いながら、眠りにつくとしよう。今日もいい1日だった。
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